Devotus / デヴォトス NZ / Martinborough

“Devoted to Pinot Noir”- その言葉が意味するところの通り、ピノ・ノワールに憑りつかれ、ピノ・ノワールのみを追求する男、Don McConachy / ドン・マコナキー。Devotus / デヴォトス(ラテン語で ”~に尽くす”を意味する)はそのドンによって2014年世界屈指のピノ・ノワール銘醸地、マーティンボロ・テラスに設立された極めて小規模なワイナリー。栽培・生産されているのはピノ・ノワールのみで、平均的な年間生産量はトータルで約500箱のみ(それも毎年予約のみで完売してしまいます)。


ドンは49歳(2019年現在)、NZの家畜・穀物などを育てる牧場の家系に生まれ、大学ではメカニック・エンジニアを専攻。卒業後は全58カ国でエンジニアとして21年働いたという異色の経歴の持ち主。しかしその21年の間にフランス・イタリアのワイン産地で数多くのワイン畑に関わる機会があり、そこに携わる人々・畑・ブドウ、そしてワインについて得難い経験を重ねていくうちに、「本当に素晴らしいワインとは、管理者の愛に溢れ完璧に面倒を見られたブドウ畑から産まれる」というシンプルでありながら真理とも言える答えを持つに至ります。そして特にその傾向が顕著なピノ・ノワールに魅了され、自らの故郷・自らの手でピノ・ノワールを栽培するという夢を持ったのでした。


ドンがNZに妻と共に戻ったのは2012年。彼が思うベストなピノ・ノワールのための土地を探し求めるも、ピノ・ノワールは品種特性に適した土壌・気候を備えた畑でなければ真に偉大な品質は求められません(中途半端なピノ・ノワールを造ることは彼にはできないのです)。しかし彼にとって運命的だったのは、NZでピノ・ノワールを栽培するために理想的な「Martinborough Terrace / マーティンボロ・テラス(水はけの良い砂利質)」に、彼が愛する2つのワイナリー、”Dry River”によってワイン産地としてのマーティンボロ初期にピノが植えられ(つまり望みうる限り樹齢の古い)、かつ”Ata Rangi”との”間”に位置する3haの畑が売りに出されたことでした。ドンは運命に感謝しその土地を購入、その畑に”Devotus”と名付けたのでした(2014初リリース)。


幸運にもベストと言える畑を手に入れたドンに、もう1つの幸運が訪れます。それはNZで最も才気に溢れた若き醸造家「Alex Craighead / アレックス・クレイグヘッド」との出会い。まだまだワイン造りにおいては多分に人の手による介入がなされ、土地本来の声よりも醸造テクニックによる個性がワインに見られることが多いNZにおいて、アレックスが追求しているナチュラルなアプローチによるテロワール重視のワイン造りはドンの求める理想に合致。アレックスもドンが所有する畑が持つポテンシャルに魅せられ、現在に至るまでコンサルタントとして携わるようになります。


ドンが所有する3haの畑にはピノ・ノワール(クローンはDijon667,777,114,115, Abel & Pommard)のみが植えられ、最も古いもので樹齢30年を超えるマーティンボロの中でも初期に開墾された「テラス」と呼ばれる区画。川沿いの薄い層が重なる表土と石を多く含む水はけの良い土壌(そのため根が深く伸びる)をもつ畑では灌漑はせず、除草剤を含む化学的な農薬も一切使われず、オーガニックに管理されています(認証は無し)。収量は極めて低く抑えられ(2018Devotusは4.75t / ha)、ブドウがもつポテンシャルをいかに高めるかにドンの主眼はあるため、彼は畑でその時間のほとんどを過ごします(そんなドンは自らを誇りをもって”ヴィニュロン”と名乗ります)。


対照的にワイン造りで見られるのは”hands-off”の精神。求めうる限りベストな品質で収穫されたブドウは野生酵母によって醗酵され、補糖も補酸も行いません。新樽や清澄剤といったものも使用せず、添加されるのは極少量の酸化防止剤(約30ppm)のみ。勿論ほったらかしにするという意味ではありません。そうして産まれるデヴォトスのピノ・ノワールはその限られた生産量も相まって毎年予約受付のみで完売。日本への入荷も当時は全ての在庫が完売していたため、丸1年待ってようやく輸入・ご紹介することができるようになったのです。

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