Ravensworth / レイヴェンスワース NSW / Canberra District

Ravensworth / レイヴェンスワース。その繊細かつ鮮烈なアロマ、そして何より上質なテクスチャーを備えた美しいワインたちは、自ら料理本まで出版するほど博識なシェフでもあり、モダン・オーストラリアの伝説的な存在であるClonakilla / クロナキラのワイナリー責任者を長年務めた醸造家でもある一人の男、Bryan Martin / ブライアン・マーティンからリリースされます。


ワイナリーと自社畑が位置するのはキャンベラ・ディストリクトに属するマルンバットマン。幼少期から食に興味をもち独学で料理を続け、ロンドンでワイン文化と出会い、豪に戻った後はホテルで働きながら料理教室を開き、さらには新聞にコラムも投稿していたというブライアン。常に新しいことへの挑戦を続ける探究者である彼は、あるワイナリーで働く機会を得たことをきっかけに98年に現在の自社畑と出会い植樹を開始、並行してチャールズ・スタート大学でワインサイエンス・コースを修了。遂に01年に家族の協力を得てレイヴェンスワースとしてワイナリーを設立します。現在の自社畑に元々植えてあったブドウは気候に合致していないと考えた彼は、気象データに基づいた検証を経てシラーズ、リースリング、サンジョヴェーゼ、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴィオニエなどを植え進めます。大きな転機となったのが04年。同じ年頃の子供たちをもつ友人同士となっていたTim Kirkから請われ、クロナキラの醸造および栽培担当をフルタイムで兼任することになったのです。クロナキラはその後Decanter誌で世界中の煌びやかなワインたちと並んでLegend of Wineに選出、ラングトンズではその最高位Exceptionalに格付けされるなど、センセーショナルな大躍進を遂げることになります(現在クロナキラとの約17年に及んだ契約は終了しています。)


そのブライアンが自身のレーベルとして手掛けるレイヴェンスワースのワインは標高650mに位置する自社畑からのブドウと、近隣の畑のブドウから醸されます。自社畑では森林学・菌学を採り入れた独自の考えに基づく有機栽培を実践(認証なし)。ブドウ畑を「森」と独特な表現で説明するように、本来ブドウが生息する多様性に満ちた環境を念頭に、除草剤はもちろん、「森」を害するような化学的な薬品や機械(イタリア製の小さな可愛らしいトラックのみ)を用いずに管理されます。すると、どんな酷暑の年も「森」の中は驚くほど涼しく、土壌はソフトに保たれるといいます。


醸造は以前までクロナキラで行っていましたが、現在では全て自前の設備を揃えています。栽培にも通底するのは、人間の手による不自然な介入をなるべく避け、自立を促す姿勢。野生酵母による醗酵、極少量の酸化防止剤以外の添加物不使用といった基本アプローチが採られ、長期間のスキンコンタクトやエッグタンクでの熟成などブライアンの経験と閃きに裏打ちされた試行錯誤が常に繰り返されています。しかしオフ・フレーヴァーの類は一切無く、食に造詣の深い探究家であるブライアンのケアが細部にまで行き届いた極めて高いクオリティ。非常に限られた生産量(平均年産5500箱)と国内の強い需要のため、今まで本格的に輸出されたことはなく、現時点では今後も輸出のシェアが増える見込みはありません。

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