Hochkirch / ホッフキルシュ VIC / Henty

ヴィクトリア州南西部、オーストラリアにおいて屈指の冷涼気候を誇る産地ヘンティで1990年に設立されたHochkirch / ホッフキルシュ。オーナー醸造家はJohn Nagorcka / ジョン・ナゴルカ。オーストラリアにおいてナチュラルワインブームが始まるよりもずっと以前からビオディナミ農法に取り組み、自然醗酵および少量の亜硫酸以外の添加物を使わない造りを実践してきた信念の男であり、現役のマエストロ。その特徴的なラベルデザインから想像される通り、ジョンはドイツ系移民の子孫(4世代目)で、彼の曾祖父がドイツのザクセン州から宗教的な自由を求め19世紀半ばにオーストラリアへと移住したことから全ては始まりました(19世紀に入るとルター派の多くの人々がオーストラリアへと移住。特にバロッサ・ヴァレーは彼らによって拓かれ、現在でも重要なワイン産地となっています)。当時ヘンティにも同じ境遇のドイツ系移民による村「ホッフキルシュ」があり、それは現在では英語名であるTarrington / ターリントンという名前に変わってしまっていますが、ジョンによって設立されたこのワイナリー名として現在へと受け継がれています。


ジョンは当時放射線技師として働いていましたが、彼の家族が3世代に亘って維持してきた農場(羊などの家畜や穀物、野菜など)を引き継ぐことを決めた際に「価値のある素晴らしい芸術品を造るため」ワイナリーを興すことを決意、1990年に1.2haが植樹されたことからホッフキルシュは始まりました。当時様々な品種を実験的に栽培する中で、ヘンティの冷涼気候に合致したピノ・ノワールやリースリングへと注力するようになったと言います。また、当初は除草剤も使用するコンヴェンショナルな栽培をしていましたが、耐性の強い雑草や土壌環境が壊れてしまったことから試行錯誤する中で当時一般的ではなかったビオディナミ農法へと行き着き、実践することで劇的な改善が見られたため1999年から現在に至るまで自身の農場は(ブドウ畑だけでなく)全てデメテール認証(2005年取得)を得たビオディナミ農法によって管理されています。またブドウ畑は海抜250mほどの北向き斜面に配置されており、全て自根・無灌漑、さらに1haあたり最大6000本あたりの高密植で栽培されています(現在はトータル8haにPN、CH、リースリング、シラー、セミヨン、SBが植えられています)。


醸造は全て野生酵母によって自然醗酵され、ボトリング前の少量の亜硫酸以外は添加物を使用しません。この造りはオーストラリアにおいてナチュラルワインブームが起こる以前からジョンの信念によって貫かれている方針であり、現在では一部のワインで亜硫酸無添加のワインもリリースされています。白ワインは基本的に全てスキンコンタクト(基本的に短期間)がとられ、冬の間ステンレスもしくは古樽で寝かせた後にボトリング。赤はタンク内でマセレーションをしながら自然醗酵させ、オーク樽(仏産、キュヴェによって一部新樽)で約1年半エレヴァージュされリリース。全てのワインに清澄剤は使用せず、無濾過でボトリングされます。


しかし彼らのワインに対する姿勢は決して放任主義ではありません。ジョンの言葉を借りるなら、「私たちにとってテロワールとは、ブドウが栽培されている土地に関わる全てが奏でるオーケストラであり、それはビオディナミによってのみ適切に指揮されるもの。微生物やブドウ樹、ヴィンテージの気候条件や土壌といった様々な要素がバランスの取れたハーモニーを奏でるとき、ワインは初めて真に人を感動させる芸術品となる」のです。

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